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初めて映画館で見た映画のこと

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小学校2年か3年の時だったと思う。
母と弟と三人で映画館へでかけた。
確か有楽町の映画館だったと思う。

出かける前に母が私に
「涙が出て止まらなくなるから、ハンカチをたくさん持っていってね」
と言ったことをよく覚えている。

映画を見た後
「ちっとも涙が出なかったけど、どうしてママはあんなことを言ったのだろう」
そう思ったのは、はっきり覚えているけれど
そのことを母に話したかどうかはよく覚えていない。


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みんなで見た映画は「禁じられた遊び」。
この映画を、母がその時どうして私たちに見せたかったのか
当時は全くわからなかったし
この映画の意味も、10歳にも満たない子どもによくわかるわけがない。

でも、母が29年前に亡くなってから
少しずつ母の気持ちに思いが及ぶようになり
今は、いろんなことがはっきりとわかる。

母は、昭和7年に祖父の仕事の都合で上海で生まれた。
その年は上海事変の起こった年で
そのせいで、日本へ戻る船の中で祖母が風邪を引き
しばらくして亡くなってしまった。
つまり、祖母は母が1歳になる前に亡くなったわけで
母は、その母の姿や愛情に触れることなく育ったのだ。

歴史に「もし」はあり得ないというけれど
もし、上海事変が起こっていなければ祖母は母が1歳になる前に
旅立ってしまうことはなかったであろう。

母は、「禁じられた遊び」のポ―レットに自分の姿を重ねていたに違いない。
きっと、映画を見ながら直接呼びかけることのなかった母親の姿を
母自身もどこかに探しながら
「お母さん、ママ!」の言葉を心の中で叫んでいたに違いない。

この映画を見て、ちっとも涙の出なかった幼い女の子は
今は、見ようと思うだけで涙が出そうになるくらい涙もろくなり
この映画のことや戦争の意味がわかるようになった。

あの日のこと、母のこと、戦争のこと、平和のこと・・・
いろいろ考えながら、この映画をもう一度見ようと
ずいぶん前から思っていて
今年になってからこの映画のDVDを手元に用意した。

しかし、躊躇しながら時が過ぎ
終戦記念日の8月15日の前には見ようと思いつつ
結局見られなかった。

この映画を幼い私に見せることで、
特に何かを母が私に言い聞かせることもなく
無言で反戦の心、平和の大事さを伝えてくれた母。
そして、私は会うことができなかった祖母、祖父
またその先の人々
父や父方の祖父母や先人
さらには、その周囲にいた人々
その多くの人たちの存在や気持ちのおかげで
私がここにいるわけだ。

平和への気持ちは、私一人の中で
ふっと現れたのだはなく
世代を超えて伝わってきたものだ。

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今朝の公園は、風があってとても気持ちがよかった。

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空や花や

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芝や木々が

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とても眩しく

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平和で穏やかな時間を

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尊く、尊く感じた。

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by echalotelle | 2016-08-15 22:22 | 書いておきたいこと・思い出

liberte,amitie,illimite


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