2017年 04月 02日
花と心- 紀友則と紀貫之
そして散っていく季節
百人一首の中でも有名なこの二つの歌が心に響く。
久方の光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ 紀友則
人はいさ心もしらず故郷は 花ぞむかしの香ににほひける 紀貫之
どちらの歌にも花と心の文字が見える。
33番目と35番目に位置する従兄の関係にある二人の歌は
自然の広がりと人の心の内を詠みつつ
それぞれ視覚と嗅覚に訴えながら春の風景を鮮やかに見せてくれる。
この二首を並べて見ていると
飽きることなく何時間でも過ごせるように思う。
間の34番目には藤原興風(おきかぜ)の次の歌がある。
誰をかも知る人にせむ高砂の 松も昔の友ならなくに
ここにも自然の姿と人の心が現れている。
めでたい松に老いた人間の悲哀を、対象的に謳っている歌だそうだが
白洲正子氏は
意味を知るよりも、何度も吟唱している間に自然につかめるものが
歌の姿であろうといっている。
花という漢字は書く度にいろんな"花"になる。
バランスをとるのが難しいが
それだからこそ、微妙な具合でいろんな感じに書けるところが楽しい。
この色紙は、私が子どもの頃
近くに住む児童文学作家の坪田譲治氏に書いてもらったもの。
ここにも「花」の文字がある。
譲治氏の人柄がにじみ出ているように思える字だ。
子どもが咲く花なら、大人は咲いた花
あるいは
次の花を咲かせる花であろうか。
そして、芍薬も蕾をつけ始めている。
百人一首を読みながら、花の季節はさらに続く。
by echalotelle
| 2017-04-02 23:50
| 表現されたもの、本・映画など